エルメスのバッグを選ぶとき、モデルやサイズ、およびカラーと並んで悩ましいのが素材ではないでしょうか?トゴ、エプソン、クレマンス、スイフト。一通りその素材名は聞いたことはあっても、何がどう違うのか、自分には結局何が一番ベストなのか。バッグの素材は、思っている以上に見た目の印象を左右するとともに、重さ・傷つきやすさや経年変化の違いにも直結します。例えば同じ人気のバーキン30でも、トゴとエプソンでは持ち心地も実際にスタイリングしたときの印象もまったく違ってきます。今回はエルメスでしばしば用いられる素材をメインに、5つの観点から整理し徹底解説します。
エルメス素材を見るときの5つの観点

エルメスのバッグを選ぶうえで、素材を理解するときに役立つ観点をまずは整理しておきたいと思います。
型押しのレザー(エプソンなど)は傷に強く、一方スムースなレザー(ボックスカーフなど)は傷に弱い、というのが基本ルールです。シボ(細かい凹凸)のあるレザーは、その中間に位置します。
同じモデル・同じサイズでも、素材によって重さが変わります。使う頻度が高く、軽く持ちたいとお考えの方は、ここを見落とすと後悔しやすいポイントになりえます。
時間とともに味が出る素材と、できるだけ買った状態を保ちたい素材があります。素材を育てる感覚を楽しめるか、綺麗な状態を維持したいか、好みが分かれるところです。
パリッと自立する素材と、くたっと馴染む素材があります。バッグ全体のシルエットを保ちたいか、持つほどに体に馴染んでくる感じがいいのか、これも好みです。
カジュアルに寄る素材と、フォーマル寄りの印象を持つ素材があります。想定している使うシーンによって選び方が変わるといえるでしょう。
まず押さえたい、エルメス定番の5種素材

それではここから実際の素材別にその特徴を細かく見ていきましょう。まずは定番の5つの素材に着目してみます。

エルメスのレザーの中で、もっともよく見かける素材といえるでしょう。バーキンやケリーの定番素材でもあり、迷ったらこれと言われることが多いレザー素材です。
トゴ素材の特徴は、細かい凹凸(シボ)のある表情。柔らかすぎず硬すぎず、軽くて、傷にも比較的強い。形も保ちやすく、経年変化も穏やかなので、長く使っても劣化が目立ちにくいという利点も。多方面であらゆる要素のバランスが取れているのが、トゴの一番の魅力かもしれません。
加えてシーンを選ばず、カジュアルでもフォーマルでも違和感なく馴染みます。エルメス最初の一本を選ぶときに、トゴが推されやすいのには理由があるといえるかもしれません。

エプソンは、細かい筋目模様の型押しレザーです。表面が硬めで、傷に対しては非常に強い特徴があります。形が崩れにくく、パリッとしたシルエットを保ってくれます。
ケリーの外縫いに多く採用されている素材で、シャープで凛とした印象を与えてくれます。カチッとしたフォーマルな印象を求めるなら、エプソンが向いているといえるでしょう。
経年変化はほとんどなく、綺麗な状態を保ちたいという方には特に相性がいい素材です。一方で、育てる楽しみを求める方には、少し物足りなく感じるかもしれません。

クレマンスは、しっとりとした柔らかい手触りが特徴のレザーです。ピコタンやガーデンパーティのような、日常使いの軽量モデルに多く使われています。
柔らかいぶん形はくたっとしやすく、シルエットはやや崩れます。傷もエプソンやトゴと比べると目立ちやすい部類です。ただ、その柔らかさが日常使いの心地よさにつながっていて、女性からの人気が高い素材です。
カジュアル寄りで、親しみやすい雰囲気が魅力。気負わず使えるエルメス、という意味では、クレマンスの右に出る素材はなかなか無いのではないでしょうか。

ネゴンダは、ガーデンパーティのオールレザー版に使われている素材です。クレマンスに比べるとやや重く、しっとりとした上質感があります。
傷には比較的強く、形も安定しやすい点が特徴です。フォーマル度はクレマンスより少し高めで、トートバッグでありながらきちんとした印象を与えてくれます。
毎日使いには重さがネックになることもありますが、ガーデンパーティを少しフォーマルに、長く使いたいとお考えの方にはおすすめしたい素材です。

スイフトは、エルメスのレザーの中でも発色の美しさが別格の素材といえるでしょう。柔らかくしなやかで、染料がレザーに深く浸透するため、色の出方に独特の深みがあります。
ただし、傷はつきやすく、デリケートな素材でもあります。スムースな表面なので、ちょっとした擦れも目立ちやすいというデメリットも。色を楽しむための素材と割り切って、丁寧に扱う覚悟が必要かもしれません。
コンスタンスや、ケリーの一部モデルに採用されており、発色を最大限に楽しみたい方におすすめの素材です。
知っておくと役立つ、他の素材と素材に関する豆知識

ここからは、定番5種ほど頻繁には登場しませんが、知っておくと役立つエルメス素材と豆知識を紹介します。
トリヨンクレマンス ― 実はクレマンスの正式名称

クレマンスとトリヨンクレマンスはよく混同されがちですが、実は同じ素材を指しています。
トリヨンクレマンスが正式名称で、クレマンスはその略称となっています。
ボックスカーフ ― 光沢のあるクラシック

ボックスカーフは、エルメスの伝統的なクラシックレザーです。表面が滑らかで光沢があり、独特の高級感を持っています。
ヴィンテージのバーキンやケリーで見かけることがありますが、現行ラインでは生産が限られており、入手難易度は高めです。傷はつきやすい素材ではあるものの、経年変化が美しく、味のある風合いに育っていきます。
素材の育てる楽しみを求めるファンに根強く支持されている素材のひとつで、エイジングを愉しみたい方は選択肢のひとつに入れてみるのも良いでしょう。
ヴォー系統という呼び方の整理

中古市場や専門サイトを見ていると、ヴォー・エプソン、ヴォースイフトといった呼び方を見かけることがあります。
ヴォー(Veau)はフランス語で子牛を意味する接頭語です。つまりヴォー・エプソン=エプソン、ヴォースイフト=スイフトと、同じ素材を指しています。表記揺れのようなものと捉えて良いでしょう。
各素材を一覧で比較
ここまでの素材別紹介を一度整理しておきましょう。
| 素材 | 傷つきやすさ | 重さ | 経年変化 | 形の安定性 | フォーマル度 |
|---|---|---|---|---|---|
| トゴ | 強い | 軽め | 穏やか | 保ちやすい | 中くらい |
| エプソン | 非常に強い | 軽い | ほぼ変わらない | 崩れない | やや高め |
| トリヨンクレマンス | 普通 | 軽い | やや出やすい | くたっとしやすい | やや低め |
| ネゴンダ | 強い | やや重い | しっとり | 安定 | やや高め |
| スイフト | 弱い | 軽い | 味が出る | くたっとしやすい | 中くらい |
| ボックスカーフ | 弱い | 軽め | 美しく出る | 保ちやすい | 高め |
冒頭で紹介した「迷ったらトゴ」と言われる理由が、こうして並べてみるとよく見えてくるかと思います。各方面におけるバランスが取れているのが、トゴの最大の魅力といえるかもしれません。
迷いやすい組み合わせと選び方

ここからは、特に多くの方が迷う組み合わせを3つ取り上げて、選び方における観点を整理してご紹介致します。

バーキンやケリーを選ぶとき、最後に迷うのはこの二択の選択肢になりやすい傾向にあります。
先述した通り、トゴは柔らかい印象で、シボのある表情が温かみを感じさせます。経年変化も穏やかに楽しめる、万能型の素材といえるでしょう。
一方エプソンはシャープで、形のラインがくっきり出ます。傷に強く、ほぼ劣化を感じさせないため、綺麗なまま長く使いたい方に特に向いています。

クレマンス素材あるいはネゴンダ素材。ガーデンパーティやピコタン系で迷うのが、この組み合わせになることが多いです。
クレマンスは軽くて柔らかく、カジュアルで、エルメスを日常使いに気軽に取り入れたい方に向いています。
ネゴンダはやや重く、しっとりとした上質感があります。少しフォーマル寄りに使いたい、大切に長く愛用したい方に向いています。

コンスタンスやケリーの一部モデルで迷うのが、スイフト素材あるいはトゴ素材です。
先述した通りスイフトは発色が美しく、色を楽しむための素材。鮮やかなカラーや深みのある色を選ぶなら、スイフトの発色は他の素材では出せない魅力があります。
一方トゴ素材は実用性が高く、扱いやすいのが利点です。傷の心配も少なく、デイリーで持ちやすい素材です。
コレクション別 メイン素材

最後に主要コレクションでよく選ばれる素材をそれぞれ整理しておきましょう。
| コレクション | よく選ばれる素材 |
|---|---|
| バーキン・ケリー | トゴ、エプソンが主流。スイフトは色重視の選択肢 |
| ピコタン | トリヨンクレマンスが定番 |
| ガーデンパーティ | トワル&レザー、もしくはオールレザー(ネゴンダ) |
| コンスタンス | エプソン、スイフト |
| エヴリン | トリヨンクレマンス、エヴァーカラー |
コレクションごとの素材選びについては、個別の記事でより詳しく解説しています。
素材選びで失敗しないために

ここまでエルメスの素材についていくつかの観点から解説しました。しかしながら素材選びに絶対の正解はありません。とはいえ、選び方の考え方としていくつか押さえておきたいポイントは存在します。

想定しているアイテムを毎日持つのか、特別な日に持つのか。一本目なのか、コレクションの追加なのか。ここが定まると、優先すべき素材の特性が見えてきます。

どんなに美しい素材でも、重さが気になって使う機会が減ったり、傷が気になって遠慮してしまったりすると、結局使う頻度が落ちます。日常使いなら、扱いやすさを最優先にするのが長く付き合うコツといえるでしょう。

デイリー使いというよりも、特別な機会など持ち出す頻度が低いのであれば、多少デリケートでも、美しさを最優先で選ぶ価値があります。スイフトやボックスカーフのような素材は、特にこういった位置付けで選ぶと真価を発揮することでしょう。

スイフトやクレマンスのように経年変化が出やすい素材は、中古品の状態評価が分かれやすいです。買う前に、その素材がどう変化するかを知っておくと、判断がしやすくなります。
素材の正解はひとつではなく、自分の使い方や好みに合うかどうかが重要です。ぜひ今回ご紹介したポイントをご参考いただけると幸いです。
まとめ

いかがでしたか?今回はエルメスの素材に着目して、定番5種から豆知識、迷いやすい組み合わせの選び方までご紹介しました。
素材は見た目の印象だけでなく、重さや傷つきやすさ、経年変化といった日々の使い心地にも直結する要素です。迷ったときは、ご自身がどんな場面でそのバッグを持ちたいかを起点に考えてみると、答えが見えやすくなるのではないでしょうか。
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FREQUENTLY ASKED QUESTIONSよくある質問
エルメスで最も人気の素材は何ですか?
トゴです。エルメスのレザーの中でもっともよく見かける素材で、バーキンやケリーの定番素材でもあります。柔らかすぎず硬すぎず、軽くて傷にも比較的強く、形も保ちやすい。あらゆる要素のバランスが取れていることから「迷ったらトゴ」と言われることが多い素材です。
トゴとエプソンの違いは何ですか?
トゴは細かいシボ(凹凸)のある柔らかめのレザーで、温かみのある表情と穏やかな経年変化が特徴。エプソンは細かい筋目模様の型押しレザーで表面が硬く、傷に非常に強く型崩れもしにくいのが特徴です。経年変化はほぼなく、綺麗な状態を長く保てます。
クレマンスとトリヨンクレマンスは違う素材ですか?
同じ素材です。トリヨンクレマンスが正式名称で、クレマンスはその略称にあたります。しっとりとした柔らかい手触りが特徴で、ピコタンやガーデンパーティのような日常使いの軽量モデルに多く使われています。
「ヴォー・エプソン」「ヴォースイフト」とは何ですか?
ヴォー(Veau)はフランス語で子牛を意味する接頭語です。ヴォー・エプソン=エプソン、ヴォースイフト=スイフトと、同じ素材を指しています。中古市場や専門サイトでよく見かける表記揺れのようなものと捉えて良いでしょう。
傷が気になる場合はどの素材を選べばいいですか?
エプソンが最も傷に強い素材です。型押しレザーは傷に強く、スムースなレザー(ボックスカーフ、スイフトなど)は傷に弱いというのが基本ルール。シボのあるトゴはその中間で、傷がつきにくいうえシボのおかげで小さな擦れも目立ちにくいため、扱いやすさとのバランスを重視する方にも向いています。
経年変化(エイジング)を楽しめる素材はどれですか?
ボックスカーフとスイフトです。ボックスカーフは表面が滑らかで光沢があり、経年変化が美しく味のある風合いに育っていきます。スイフトも使い込むほどに味が出る素材です。ただしどちらも傷がつきやすいデリケートな素材のため、丁寧に扱う心構えが必要になります。